Armが予測する2025年以降のテクノロジー(前編)「シリコン」

  • 本記事は、2025年1月20日にArm Newsroomに掲載された記事を転載したものです。

AIの台頭から将来的なシリコン設計、市場の重要トレンドまで、Armによる2025年のテクノロジー予測をご紹介します。

Armは、常にコンピューティングの未来を考えています。最新アーキテクチャの機能からシリコンソリューション向けの新技術まで、Armが創造・設計するあらゆる要素は、テクノロジーが今後どのように使用され、体験されるかを念頭に置いています。

これを支えるのが、テクノロジーエコシステムにおけるArm独自のポジションであり、IoTからデータセンターと、その間のすべての市場を網羅する、グローバルかつ相互に繋がった用途特化型の半導体サプライチェーンに関して、Armには膨大な知見が蓄積されています。つまり、テクノロジーの将来的な方向性や今後数年間で台頭するであろう重要トレンドについて、Armは幅広い洞察を有しています。

これらを踏まえ、Armは、AIの将来的な成長からシリコン設計、さまざまなテクノロジー市場における重要トレンドまで、テクノロジーのあらゆる側面を網羅した、2025年以降のテクノロジー予測を以下にご紹介します。Armが考える今年の展望は以下の通りです。

シリコン

チップレットがソリューションの構成要素となりシリコン設計が再考される

コストと物理的な観点から、従来型のシリコンのテープアウトはますます困難になっています。業界としては、シリコン設計を見直すとともに、こうした従来型アプローチの枠組みを超える必要があります。一例として、単一のモノリシック・チップにすべての機能を統合する必要はないという認識が高まっています。ファウンドリ企業やパッケージング企業がムーアの法則の限界を突破する新たな方法を見出しつつも、新たな局面に直面する中、チップレットのような新たなアプローチが台頭しつつあります。

チップレットについては、さまざまな実装手法への注目が高まっており、コア・アーキテクチャとマイクロアーキテクチャに対してより大きな影響を及ぼしています。アーキテクトは今後、製造プロセスノードやパッケージング技術などのさまざまな実装手段に対する認識を深めた上で、チップレットによるパフォーマンスと効率性のメリットを引き出す必要があります。

チップレットはすでに特定の市場のニーズや課題に対応していますが、こうした傾向は今後数年間でさらに進化すると考えられます。自動車市場の場合、チップレットは、企業のシリコン開発プロセスで車載グレードの認定取得をサポートできます。また、さまざまな演算コンポーネントを活用することで、シリコンソリューションの拡張や差別化もサポートできます。例えば、演算リソースに特化したチップレットはコア数が異なり、メモリ特化型のチップレットはメモリの容量や種類が異なるため、システムインテグレーターの段階でこうした多様なチップセットを組み合わせ、パッケージ化することで、高度に差別化された製品をより多く開発できます。

ムーアの法則を「再調整」

ムーアの法則により、チップには数十億個ものトランジスタが集積されており、パフォーマンスは毎年倍増しつつ消費電力は毎年半減しています。しかし、単一のモノリシックなチップ上でトランジスタ数や性能の向上と、消費電力の削減を追求し続けることは、持続可能とはいえません。半導体業界はムーアの法則とその意味を見直し、再調整する必要があります。

その一環として、性能のみを重要指標とする思考から脱却し、ワットあたり性能、面積あたり性能、消費電力あたり性能、総保有コストをシリコン設計のコア指標として重視すべきです。このほか、開発チームにとっての最大の課題であるシステムの実装面に焦点を当てることで、システム・オン・チップ(SoC)やその後のシステム全体にIPが統合された際のパフォーマンスの低下を回避するための新たな指標も考えられます。これにより、シリコンの開発・デプロイ時のパフォーマンスの継続的な最適化が考慮されます。これらの指標は、AIワークロードの演算の効率化を推し進めるものであり、より広義テクノロジー業界の将来を見極める上でますます重要な意味を持ちます。

用途特化型シリコンの成長

用途特化型シリコンを求める業界全体の動きは、今後も高まり続けるでしょう。AIの台頭により消費電力が重視される中、既成のコンピューティング・ソリューションを中心としたデータセンターの構築がもはや不可能なことは明白です。むしろ、特定のデータセンターやワークロードを中心に演算機能を構築・設計する必要があります。カスタムシリコンへの移行は、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureなどの主要なクラウド・ハイパースケーラーを中心に業界全体で進んでいます。テクノロジーへの大規模な投資により、大手テクノロジー企業がASICサービスからチップレットまでのカスタムシリコンをより迅速に設計・デプロイできることで、2025年にはこうした動向が継続すると予想しています。

シリコンソリューションが商業的な差別化の鍵に

シリコンソリューションで真の商業的な差別化を実現するための、各社の現在の取り組みの一環として、より用途特化型のシリコンが重視されます。こうした取り組みの大きな要素となるのが、中核的な演算コンポーネントとしてのコンピュート・サブシステム(CSS)の採用拡大であり、これにより、企業はその規模を問わず、自社のソリューションを差別化・カスタマイズできるほか、特定の演算機能や用途特化型機能に向けて実行または貢献するよう各コンポーネントを構成できます。

標準規格が今後ますます重要に

エコシステムがそれぞれの製品とサービスを差別化し、真の商業的価値を付与しつつ、時間とコストを削減できるような環境を実現する上で、欠かせないのがプラットフォームとフレームワークの標準化です。異なる演算コンポーネントを統合するチップレットの登場により、異なるベンダーの異なるハードウエアをシームレスに連携させるものとして、標準規格は今後ますます重要になります。ArmはすでにArm Chiplet System Architecture(CSA)に関して50社以上のテクノロジーパートナーと協業していますが、チップレット市場の標準化に向けた機運が高まる中、今後はますます多くのパートナーが参加する見通しです。自動車業界では、ソフトウエア定義型自動車(SDV)内のハードウエアとソフトウエアの分離を目指すSOAFEEとの組み合わせによって、演算コンポーネント間の柔軟性と相互運用性が向上し、開発サイクルも短縮されます。

シリコンとソフトウエアに関する、エコシステムのかつてないコラボレーション

シリコンとソフトウエアの複雑化が進む中、シリコンとソフトウエアの設計、開発、統合の全段階を1社のみで対応することは不可能であり、エコシステムの高度なコラボレーションが求められます。これにより、規模を問わず、さまざまな企業にとっては、コアコンピテンシーに基づき多様な演算コンポーネント/ソリューションを提供するという独自の機会が得られます。これは自動車業界にとっては特に重要な意味があり、シリコンベンダー、ティア1メーカー、OEM、ソフトウエアベンダーなど、サプライチェーン全体が協力することで、それぞれの専門知識、技術、製品を共有し、AI対応SDVの未来を定義しつつ、エンドユーザーにとっての真の可能性を実現することが求められます。

AI強化型のハードウエア設計が台頭

半導体業界では、AI支援型のチップ設計ツールの採用が増加しており、フロアプラン、配電、タイミングクロージャの最適化をAIが支援しています。このアプローチにより、パフォーマンス結果が最適化されるだけでなく、最適化されたシリコンソリューションの開発サイクルが短縮されることで、小規模企業も用途特化型チップによって市場に参入できます。AIが人間のエンジニアに取って代わることはないものの、高電力効率のAIアクセラレーターやエッジデバイスの分野を中心に、モダンなチップ設計の複雑化に対応する上でAIは必須のツールとなります。

本記事は全2回の前編です。

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Armが予測する2025年以降のテクノロジー(後編)「AI・マーケット」
転載記事:Armが予測する2025年以降のテクノロジー
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