Armによるモバイルゲーム体験の変化とは:AIと高度なGPU技術でモバイルゲームの未来を切り拓く

  • 本記事は、2025年2月24日にArm Newsroomに掲載された英語記事を日本語訳したものです。

これまで、ゲーム開発は主にパソコンや家庭用ゲーム機向けのコンテンツを中心に行われてきましたが、状況は変わりつつあります。モバイルゲームはコンテンツ制作の大幅な進歩、グラフィックスのリアルさの向上、そして没入感のある体験の広がりにより、ゲームの開発手法やプレイスタイルは急速に進化しています。

モバイルゲーム市場は2029年までに24億人のユーザーを抱えると予測されており、現在では最も多くの人がモバイル機器でゲームを楽しんでいます。それにともない、高性能と省電力の両立がこれまで以上に求められています。

テクノロジーの進化により、これまで高性能なパソコンでしか実現できなかったレイトレーシングのような技術が、モバイルGPUでも利用可能になりつつあり、より高品質なモバイルゲームがより手軽に楽しめるようになっています。

一方で、モバイルで優れたゲーム体験を提供するには、独自の課題も存在します。より高い解像度とフレームレート、そして複雑なコンテンツを実現するには、GPUの高い性能と効率が不可欠です。しかも、それを実現するモバイル端末は、コストや発熱、データ帯域、アプリケーションサイズといった制約を抱えています。

Armによる没入感とリアルさ

最新のArm GPUは、モバイル端末で高品質なゲーム体験に必要な性能を確保しつつ、発熱を抑制しバッテリー寿命を維持するように設計されています。GPUの効率を最適化することで、複雑でリアルなシーンを高パフォーマンスで描画できます。高解像度変換技術やフレーム補間などの手法により、消費電力を抑えつつ、細部までリアルな描写が可能になります。

レイトレーシングは、光が物体とどのように相互作用するかをシミュレーションすることでリアルさを高める技術の一つであり、高品質な影や鏡面反射、自然な陰影を生み出します。Arm Immortalis-G715 GPUで初めて導入されて以来、この技術はモバイル端末でより一般的になり、最新のImmortalis-G925 GPUでは前世代と比較して性能が向上し、正確さを保ちながら、さらなる描写力を実現しています。

動画:The launch of
the Arm Immortalis GPU

Mobile World Congress(MWC)では、ArmはImmortalis GPUのレイトレーシング機能を搭載したゲームデモの「Mori」を、vivo X200シリーズのフラッグシップスマートフォン上で展示しました。この端末は、Immortalis-G925を搭載するMediaTek Dimensity 9400 SoCを採用しています。

Arm Accuracy Super Resolution(Arm ASR)でビジュアル品質を向上

Arm Accuracy Super Resolution(ASR)は、パフォーマンスと消費電力を最適化しながら、モバイルゲームのビジュアル品質を向上させる高度なアップスケーリング技術です。このオープンソースのソリューションにより、フレームの一部を低解像度でレンダリングし、高解像度へアップスケールすることで、GPUの処理性能を大幅に改善し、ビジュアル品質を損なうことなく長時間のゲームプレイを可能にします。

Arm Game Developer Conference (GDC) のデベロッパーサミットやMWCでは、「Mori」のデモを通じてArm ASRによる性能向上の効果を実演しました。

動画:The benefits of Arm ASR

AIと機械学習がもたらすモバイルゲームの進歩

ゲーム開発のプロセスにおいてAIや機械学習の技術を活用することで、コンテンツ制作の高速化、リアルさの向上、ゲームプレイの強化が実現されており、GPU性能と効率の最適化も可能になっています。

AIによるゲーム体験の強化

モバイルゲームにおけるAIの活用が進むことで、キャラクターの自律的な動作やプレイヤーとの自然なやり取りが可能となり、ゲーム体験全体がより深く、魅力的なものへと変化しています。さらに、機械学習によって、より強力なAIベースの対戦相手が生成され、プレイヤーにとって一層手応えがあり、夢中になれるゲーム体験を実現しています。

複数のエージェントが連携してキャラクターのリアルな挙動を導き出し、大規模言語モデルはゲーム内のキャラクターとの自然な会話を可能にします。

加えて、「Tiny Stories」と呼ばれる小型の言語モデルも、よりインタラクティブで魅力的なストーリーテリングの実現に活用されています。Arm GDCのデベロッパーサミットでは、こうしたAIを活用したノンプレイヤーキャラクター(NPC)との音声対話を、モバイル環境上で実演しました。

将来的にも、ゲームやグラフィックス分野におけるAIと機械学習の可能性は非常に大きく、今後はシーン全体の新しい表現手法や、AIや機械学習によって生成された、まったく新しい画像や映像などが登場することも期待されています。

ゲーム開発におけるAIと機械学習の利点

AIは、端末の仕様に応じてグラフィックスなどの様々な要素を調整することで、モバイルゲームのパフォーマンスを最適化します。たとえば、「PUBG Mobile」は端末性能に応じてグラフィック設定を調整し、低性能端末では解像度やエフェクトを抑える一方、高性能端末では高度な機能を有効化し、プラットフォームを問わない安定したゲーム体験を提供しています。

デジタルコンテンツ制作ツールや、ミドルウエア、ゲームエンジンもまた、ゲーム開発プロセスにおける生産性を高めるために、AIや機械学習の技術を活用するケースが増えています。

以下にその一例をご紹介します。

  • 自動化の強化:AIはアニメーションの動きの仕組みを作る作業などの繰り返し作業を自動化し、開発スピードを向上させ品質の一貫性を保ちます。
  • 3Dモデリング・映像制作:AIツールはスケッチから詳細なモデルを生成したり、動画編集作業を自動化したりすることで、制作プロセスを効率化します。
  • コードの自動生成:自然言語の記述からコードスニペットを生成するAIツールは、ゲーム開発のスピードアップとエラー削減に貢献します。
  • ミドルウエアおよびゲームエンジン:AIはUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンのパフォーマンスを最適化し、さまざまなハードウエア構成に対応したリアルタイム描画や物理演算を向上させます。

高い没入感と高度なAI機能を備えたモバイル端末を実現

Armは、開発者の立場に寄り添いながら、ゲーム開発の目標達成をサポートすることで、モバイルゲームのエコシステムの発展に貢献しています。最先端のモバイル向けGPU技術やソリューションに加え、AIや機械学習の手法に関するトレーニングや教育など、幅広いツールと知識も提供し、開発者が次世代のモバイルゲームに備えられるようサポートしています。さらに、開発者と密接に連携することで、彼らがArmの技術を最大限に活用し、変化し続けるモバイルゲームの世界で新たな価値を生み出せるよう取り組んでいます。

関連リンク
翻訳記事:How Arm is Transforming Mobile Gaming Experiences
Armについて

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