Armは、次世代のAIインフラを支えるために設計された、Arm Neoverseプラットフォームを基盤とする新たなプロセッサー「Arm AGI CPU」を発表しました。
Armは35年以上にわたる歴史で初めて、自社設計の量産半導体製品を提供します。これにより、Arm Neoverseプラットフォームは、従来のIPおよびArm コンピュート・サブシステム(CSS)の提供に加え、カスタムチップの設計からシステム全体の統合、さらにはArm設計プロセッサーの実装まで提供範囲を拡大します。そして、ユーザーはArmベースのコンピュートの活用において、より幅広い選択が可能になります。本発表は、AIインフラの急速な進化と、エコシステムにおける大規模かつ迅速に展開可能なArmプラットフォームへの需要の高まりを反映したものです。
エージェンティックAIインフラの台頭
AIシステムは現在、グローバル規模で常時稼働するようになっています。従来、コンピューティングにおけるボトルネックは人間であり、人がシステムと対話する速度が処理全体のスピードを制約していました。しかし、ソフトウエアエージェントがタスクを調整し、複数のモデルと連携しながらリアルタイムで意思決定を行うエージェンティックAIの時代を迎え、この制約は解消されつつあります。
AIシステムが常時稼働し、ワークロードが複雑化するにつれ、CPU(中央演算処理装置)は分散されたAIシステムを大規模かつ効率的に稼働させる役割を担い、パフォーマンスを左右する中核的な要素となっています。現在のAIデータセンターにおいて、CPUはアクセラレーターの制御、メモリおよびストレージの管理、ワークロードのスケジューリング、システム間のデータ転送など、数千におよぶ分散タスクを統括しています。エージェンティックAIの時代においては、多数のエージェント間における処理の分散と連携も担う存在となっています。
こうした変化に伴い、CPUには新たな要件が求められ、進化が不可欠となっています。
Arm Neoverseは、すでにAWS Graviton、Google Axion、Microsoft Azure Cobalt、NVIDIA Veraなど、主要なハイパースケールおよびAIプラットフォームの基盤として採用されています。AIインフラがグローバルに拡大する中で、エコシステムパートナー各社からは、Armに対して、さらに踏み込んだ役割を果たすことへの期待が寄せられています。Arm AGI CPUは、こうした期待に応えるために開発されました。
Arm AGI CPU:ラックスケールでのエージェンティック効率を実現
エージェンティックAIのワークロードには、大規模環境下で高い性能を発揮し続けることが求められます。Arm AGI CPUは、現代のデータセンターにおける電力および冷却制約の範囲内で、数千のコアを並列に稼働させながら、タスク単位で持続的に高いパフォーマンスを発揮できるよう設計されています。
動作周波数からメモリ、I/Oアーキテクチャに至るまで、Arm AGI CPUのあらゆる要素は、高密度に集約されたラック環境において、大規模並列かつ高性能なエージェンティックワークロードを支えるよう設計されています。
Armのリファレンスサーバー構成は、1OU(オープンユニット)・2ノード設計を採用し、各ブレードに専用のメモリおよびI/Oを備えた2つのチップを搭載することで、合計272コアを実現しています。これらのブレードは、標準的な空冷36kWラックへのフル搭載を前提に設計されており、30ブレードで合計8,160コアを提供します。さらに、Supermicroとの提携により、液冷200kW構成において336基のArm AGI CPUを搭載することで、45,000コア以上を収容可能な設計も実現しています。
本構成において、Arm AGI CPUは、最新のx86システムと比較して、ラックあたり2倍以上の性能を実現します(※Arm試算に基づく)。これは、Armアーキテクチャの本質的な優位性と、コンピュートに対するシステムリソースの最適な配分によって達成されています。
- クラス最高水準のメモリ帯域幅により、ラックあたりの有効スレッド数を増やすことが可能です。x86 CPUでは、持続的な高負荷下においてコア間の競合が発生し、性能が低下する傾向があります。
- 高性能かつ高効率なシングルスレッド性能を持つArm Neoverse V3コアは、従来のアーキテクチャを上回る性能を発揮し、1スレッドあたりの処理能力を飛躍的に向上させます。
- 「より多くの有効スレッド」と、「スレッドあたりの高い処理能力」の組み合わせにより、ラックあたりの大幅な性能向上を実現します。
AIエコシステムにおける初期導入の広がり
Arm AGI CPUはすでに、エージェンティックAIインフラの拡張をリードするパートナー企業との間で、商用展開に向けた力強い動きを見せています。その導入領域は、アクセラレーターの管理、エージェントのオーケストレーション、各種サービスやアプリケーション、ツールの高密度化によるスケールアウト対応に加え、AIデータセンターを支えるネットワーキングやデータプレーン処理の強化にまで広がっています。
Armの主要なパートナーであり顧客でもあるMetaは、同社の各種アプリケーションを支えるギガワット規模のインフラ最適化に向けて、独自のMTIAアクセラレーターと連携する形で、Arm AGI CPUの共同開発を推進しています。その他のローンチパートナーとして、Cerebras、Cloudflare、F5、OpenAI、Positron、Rebellions、SAP、SK Telecomが参画し、クラウド、ネットワーキング、エンタープライズ領域におけるAIサービスの高度化に向けて、Arm AGI CPUの導入を進めています。また、現在、ASRock Rack、Lenovo、Supermicroより商用システムの提供が開始されています。
さらなる導入拡大に向けて、ArmはOpen Compute Project(OCP)のDC-MHS標準フォームファクターに準拠した「Arm AGI CPU 1OUデュアルノード・リファレンスサーバー」を発表しました。本リファレンス設計および関連ファームウエアに加え、システムアーキテクチャ仕様、デバッグフレームワーク、診断および検証ツールなど、すべてのArmベースシステムに適用可能な技術資産の提供も予定しています。詳細は今後開催されるOCP EMEAサミットにて発表される予定です。
Armインフラの新たなフェーズ
Arm AGI CPUの発表は、データセンター領域におけるArmの新たな展開の始まりであると同時に、コンピューティング分野におけるイノベーションを牽引し続ける姿勢を示すものです。AIが産業構造を変革する中で、Armは、ハイパースケーラーからAIスタートアップに至るまで、エコシステム全体の進化を支え続けます。
Arm AGI CPUは、Armのデータセンター向け量産半導体製品の第一弾であり、すでに注文が可能となっています。今後も、性能、スケール、効率の各面で業界最高水準を目指した製品の展開を予定しています。これらはArm Neoverse CSSの製品ロードマップと並行して進められ、Armのデータセンター顧客が、共通のプラットフォームアーキテクチャおよびソフトウエア互換性のもとで共に前進できるよう設計されています。
この新たなフェーズにおいても、「あらゆる産業のイノベーションを支えるコンピューティング基盤を提供する」というArmのミッションは不変です。ハイパースケール、クラウド、半導体、メモリ、ネットワーキング、ソフトウエア、システム設計、製造といった多岐にわたる分野における50社以上のリーディングカンパニーが、Armの半導体製品開発への展開を支持しています。Armは、Arm AGI CPUを通じて、AIネイティブなデータセンターのアーキテクチャを定義するだけでなく、実際に構築していきます。
将来の見通しに関する記述(Forward-looking statements)
本記事には、Armの製品ロードマップ、将来の業績、今後予定されている取り組み及びパートナーによる導入に関する記述など、将来の見通しに関する記述が含まれています。これらの記述は現時点における見通しに基づくものであり、実際の結果はさまざまなリスクや不確実性の影響により著しく異なる可能性があります。Armの業績に影響を与える可能性のある要因については、米国証券取引委員会(SEC)への提出書類をご参照ください。
性能に関する記述は、Arm社内の試算に基づき、Arm AGI CPUベースのサーバーをフル搭載したラックと、業界標準のワークロードを用いた同等構成のx86ベースサーバーを比較したものです。実際の結果は、システム構成、ワークロード、その他の要因によって異なる場合があります。
本記事に記載されている企業及びすべての製品名称は、各企業の商標又は登録商標です。
関連リンク
転載記事:Arm AGI CPUを発表 エージェンティックAI時代のクラウドを支えるシリコン基盤
Armについて