エージェント型AIがインテリジェントシステムの可能性を押し広げる中、フィジカルAIは、世界に欠かせない資源の採掘、食糧生産、製造、人やモノの輸送など、幅広い産業へとインテリジェンスをもたらしつつあります。これらの産業は世界で数兆ドル規模の経済活動をもたらしており、Armの試算によると、これらの産業におけるコンピューティング分野の事業機会が2030年代には年間2,000億ドル規模になると見込まれています。一方で、これらは特に変革が難しい産業でもあります。
この機会を切り拓くには、AIモデル、ソフトウエア、コンピュート、センサー、アクチュエータを統合し、信頼性を備え、大規模に展開できるシステムを構築する必要があります。これにより、インテリジェントなマシンは周囲を認識し、推論し、行動できるようになります。この課題は、一社だけで解決できるものではありません。ますます複雑化するエコシステム全体で連携を深めるとともに、分断を抑えながらも、イノベーターが差別化を図れる柔軟性を備えた共通の基盤が必要です。
2026年9月8日、Armは共通基盤の構築と各社の差別化をともに前進させる取り組みを発表しました。AWS、ECARX、Hugging Face、Liquid AI、NXP、PlusAI、PSYONIC、QNX、Qwen、Siemens、Unitree Roboticsなど、フィジカルAIの技術スタックを網羅する80社以上の企業を結集し、フィジカルAIの開発を加速させる「Arm Total Design for Physical AI」を発表しました。また、エコシステムにおける最初の共同イニシアチブの一つとして、ロボットの能力を定義し、その進化を促す共通言語の確立に向けた出発点となる「Robotics Capability Framework」を導入します。
Arm Total Designの対象を拡大することにより、フィジカルAIスタック全体のイノベーションを加速
自動運転車とロボティクスには、認識処理、AI、リアルタイム制御、安全性、効率的なコンピュートなど、多くの共通課題があります。OEMやパートナー企業には、統合リスクの低減や、ワークロードの最適化、概念実証(PoC)から実導入までの期間短縮が求められます。クラウドAI向け「Arm Total Design」で示されたように、技術スタック全体のパートナーが緊密に連携することが、これらの課題解決につながります。
「Arm Total Design for Physical AI」は、ソフトウエアスタック、AIモデル、センサー、コンピュートハードウエア、仮想プラットフォーム、デジタルツインなど幅広い分野の専門知識を結集します。これにより、ソリューションの開発と検証をより早い段階から進めることが可能になります。この協業アプローチの成果は、すでに自動車分野で現れています。Arm、AWS、Google、HERE、RemotiveLabs、Siemensは、統合型デジタルコックピットのリファレンスソリューションの開発で連携しています。このソリューションにより、開発者は実際の半導体チップが完成する前から、「Arm Zena CSS」上で複雑な車載ソフトウエアを開発、テスト、検証できるようになります。
ロボティクス・エコシステムとともに共通言語を構築
Armのチーフアーキテクトであるリチャード・グリゼンスウェイトが新たなマニフェストで述べているように、ロボティクスは急速に進化している一方で、高度化するインテリジェントマシンの能力を表し、比較し、共有するための業界共通の手法は、まだ確立されていません。こうした分断が、ロボットシステムの設計、統合、大規模展開を困難にしています。SAEレベルが自動運転に共通の語彙をもたらしたように、ロボティクスにも共通言語が必要です。Armは、業界各社を結集してこの課題に取り組む独自の強みを備えています。
「Robotics Capability Framework」は、ロボットシステムの高度化の各段階を定義し、現実世界のユースケースを、ロボットの挙動や出力に加え、遅延、コンピュート配置、メモリや電力の制約、確定性、安全性などのシステム要件と結びつけます。そのフレームワークのベースとなる枠組みは、ロボティクス・エコシステム全体から寄せられたさまざまな視点やフィードバックを踏まえて構築されました。今後もAnaxi Labs、ANYbotics、FMC³ Robotics、Fourier、GALBOT、Gravis Robotics、Lenovo、McKinsey、Robotec.aiなどの企業とともに本フレームワークを形作っていきます。また、Armはより幅広い業界に、専門知識の提供や、今後のフレームワークの発展への協力を呼びかけています。
フィジカルAIの大規模展開には、エコシステム全体でのアプローチが必要
AIのエージェント化が進む中、次なるフロンティアはそのインテリジェンスを実世界へ広げることです。これは現代における最大規模のコンピューティング分野の事業機会の一つです。しかし、その実現には技術的なブレークスルー以上のものが必要です。エコシステムがイノベーションを起こし、差別化を図り、大規模に展開できるようにする共通基盤が必要です。
Armはそのエコシステムの力を結集し、次なる展開を形作ります。技術的なブレークスルーから大規模な実用化までの道のりを加速させ、AI主導の新たな経済成長の波を切り拓いていきます。
関連リンク
日本語記事:Arm、エコシステムを結集しフィジカルAIの次なるフェーズの構築と定義へ
Armとは
著者:Arm編集部
編集:AI⇒SoftBank Group編集部