2025年2月3日、OpenAI, Inc.(以下OpenAI)、ソフトバンクグループ株式会社(以下SBG)、Armおよびソフトバンク株式会社が開催した法人向け特別イベント「AIによる法人ビジネスの変革」で、SBG会長兼社長の孫 正義とOpenAIのサム・アルトマンCEOがAIの未来と社会への影響について、対談を行いました。この対談の一部をご紹介します。
- ※本記事は英語による対談をもとに構成されており、内容およびその解釈は英語原文が優先されます。
「Stargate Project」:さらなるAIの進化には莫大な計算能力が必要

孫から「『Stargate Project』の発表についてはどう思われましたか?」と問われたアルトマン氏は、次のように答えました。
「あの瞬間は本当に感動的でした。これから計算能力が本当に重要となってくると思います。より小さいモデルで様々なことが実現できるようにはなりますが、さらなるAIの進化には、莫大な計算能力が必要となってきますので、それをこのプロジェクトにより、さらに大規模にできることは非常に素晴らしいと思っています」
孫はかつてアルトマン氏と交わした話を振り返り、「以前、『AGIはいつ来るのか?計算能力はどれくらい必要なのか?』と聞いたとき、あなたは『多ければ多いほどいい』と答えてくれました。『多ければ多いほどいい』ということは、より多くのリソースが必要なんだと考えました」と語りました。
さらに孫はインターネットの創成期を例に挙げ「インターネットが始まった時は(通信に)非常に時間がかかり、ブロードバンドが入ってきても『なんでこれだけキャパシティが必要なんだ?』と多くの人に言われました。しかしその後、高画質写真、そして動画が始まり、帯域がもっと必要だとわかってきたわけですね」と振り返りました。
これに対しアルトマン氏は「知能についても同じことが起こると思います。『(AIは)どれだけ賢くなる必要があるんだ?』と聞かれますが、賢ければ賢いほどいい。それが難しい質問や問題、課題を解決することができるわけですから」と述べました。
AIモデルの指数関数的な進化

続いて孫は「ChatGPTのモデルはかなり改良されてきたと思いますが、どのような指標で測定していますか?」と質問。アルトマン氏は「科学的な根拠はありませんが、ざっくり毎年IQが1つずつ上がり、コストが10分の1になっている感じです。それからアルゴリズムがさらに効率的になる点も重要です」と述べました。
ここで孫が「モデルは、1年に10倍ぐらい改善されているように感じますし、チップの性能も、10倍になっているように感じます。その上でStargateができればチップの数も年間10倍増やしていきます。10倍×10倍×10倍ということで、1〜2年で1,000倍。さらにそれを掛けていくと、1,000倍×1,000倍×1,000倍で10億倍になります」と語ると、アルトマン氏も次のように述べました。
「実際にそう感じるのは難しいですが、私たちは間違いなく非常に急峻な成長カーブの上にいます。そして、これまでの自分のキャリアを通じて何度も学んだことは、この指数関数的な成長を信じることが重要だということです」
対談の直前に発表された、企業ごとにカスタマイズされた最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」に関連して、孫は「もしこれらすべてのデータがあり、長期記憶などもあれば、計算能力だけではなく、遅延(レイテンシー)も非常に重要になってきます。コールセンターであれば、即座に返答をしなければいけない」とリアルタイムでの応答性能に話題を移しました。
アルトマン氏は「以前は課題でしたが、現在は我々のボイスモードを使っていただくと、本当の人間としゃべっているような感覚です、それぐらい速い。ですから、この問題も十分解決できると思います」と述べると、孫は次のように続けました。
「昨晩もChatGPTを使っていましたが、今はすぐに返事がありますよね。本当に『ワオ!』という感じで返信が速いです」
AIの役割と人々を幸せにする情熱

孫が「AIの役割は『コスト削減』なのか『人間の仕事を奪うこと』なのか」と問うと、アルトマン氏は次のように答えました。
「コスト削減はできると思いますが、重要なのはどれだけ多くのことを可能にし、どれだけ多くのことを達成できるかだと思います。そして私が一番個人的に楽しみにしているのは、AIが我々だけではわからなかった新しい知識を創造してくれることです。科学的な進歩が大幅に加速し、1年でこれまで数十年分の科学的な発見がなされれば、それが生活の質や経済に与える影響は計り知れません」
孫は、AIの悪用リスクについて「99パーセントは善人だと私は思っているが、常に1パーセントの悪人はいる」と語り、「イノベーションには機会を与えるべきだが、それでも健全な規制は必要ですよね?」と尋ねると、アルトマン氏は「強く同意します」と述べました。
話題は医療にも移りました。アルトマン氏は「いつかすべての病気を治せるかもしれない、というアイデアは、AIの最大の成果の1つになるでしょう」と述べると、孫は次のように応えました。
「少し前に父親をがんで亡くしました。AIががんやその他の難しい病気から守る手助けをしてくれるならば、我々の悲しみを減らすことができるでしょう」
最後に孫は「2017年に初めてあなたに会ったとき、『AGIの実現を目指す』と聞いて、私はすぐに『君のことを信じる、投資したい』と言いました。ほとんどの人がクレイジーだと思っていたと思うけど、私は信じていた。人々を幸せにするという情熱は変わりありませんよね?」と問いかけ、アルトマン氏も「今もその信念を持ち続けています」と応じ、固い握手とともにトークセッションは幕を閉じました。
関連リンク
OpenAIとソフトバンクグループ、Arm、ソフトバンクによる法人向け特別イベント「AIによる法人ビジネスの変革」