ソフトバンクグループ株式会社(以下、SBG)は2025年5月、アームと共に米国カーネギーメロン大学へ総額1,550万米ドルを寄付し、AIのグローバルな進化を加速させるための同大学と慶應義塾大学の次世代AI研究パートナーシップを支援することを発表しました。本記事では、パートナーシップについて紹介します。
背景
本パートナーシップは、2024年4月に日米両政府により発表されたAI分野における産学研究連携の一環であり、AI分野における国際的なリーダーとしての日米両国の結び付きをさらに強めることを目的としています。
4つの主要分野における共同研究
SBGとアームによる支援の下、カーネギーメロン大学と慶應義塾大学の研究者は「マルチモーダルおよび多言語学習」「ロボティクスにおけるエンボディドAI」「人間との共生を目指す自律型AI」「ライフサイエンスおよび科学的発見のためのAI」という4つの主要分野において研究に取り組みます。現在、両校の研究者による複数のプロジェクトが進行中です。
- 「マルチモーダルおよび多言語学習」分野では、大規模言語モデルが画像やその他のマルチモーダルデータを解析する際に発生するハルシネーション(幻覚)問題を低減する方法の研究を進めています。
- 「ロボティクスにおけるエンボディドAI」分野では、ロボットが自らの能力をより正確に理解し、家庭内のタスクをより効率的に遂行するシステムの開発を進めています。
- 「人間との共生を目指す自律型AI」分野では、非言語コミュニケーションの理解、ロボットアームとの相互作用、ソーシャルナビゲーションなどに関する研究を進めています。
- 「ライフサイエンスおよび科学的発見のためのAI」分野では、バイオメディカル画像解析、研究室の自動化、分子測定データのAI解釈などAIの自動制御による実験やデータ分析を実施しています。
ソフトバンクグループ–Arm フェローシップ
SBGは今回の寄付により「ソフトバンクグループ–Arm フェローシップ」を創設し、カーネギーメロン大学の博士課程の学生を支援します。フェローシップには、8人の学生が採用されました。
■マルチモーダルおよび多言語学習
- Pranjal Aggarwal氏
ソフトウェア開発プラットフォームや科学ツールなどのデジタル環境と自律的に対話できるコンピューター利用エージェントを開発しています。
- Emmy Liu氏
強化学習が大規模言語モデルの推論力をいかに向上させるかを研究しています。
■ロボティクスにおけるエンボディドAI
- Leena Mathur氏
現実世界で人間と協働できる社会的知性を備えたAIシステムの開発を行っています。
- Yufei Wang氏
シミュレーションで学習した方策を現実世界のロボットに転移するSim-to-Real学習手法の開発に取り組んでいます。
■人間との共生を目指す自律型AI
- Patrick Callaghan氏
ロボットが人間の教師からより直感的に学べるよう、他者が自分自身をどう理解しているかを推論する「二次的な心の理論」(second-order theory of mind)を応用し、学習効果を高め、両者のコミュニケーションを円滑にする手法を研究しています。
- Feiyu Gavin Zhu氏
家庭用ロボットを短時間で個人の好みやニーズに適応させる方法を研究しています。
■ライフサイエンスおよび科学的発見のためのAI
- Shiyi Zoe Du氏
実験における失敗を発見の好機と捉える失敗適応型ラボインテリジェンスの設計に取り組んでいます。
- Yizhou Zhao氏
物理世界の仮想レプリカである「デジタルツイン」を、動画から高精度かつ自動的に生成する手法を探究しています。
学生の研究内容は、カーネギーメロン大学の公式サイトで紹介されています。また、SBGは卒業研究プロジェクトやインターンシップなどの学部生向け学術プログラムも支援し、次世代の人材育成に貢献します。こうした取り組みを通じて、SBGはAIの社会実装に向けた先端的な研究とそれを担う人材の育成を後押しします。