スマートフォンの台頭
2007年にスマートフォンが登場すると、バッテリー寿命を維持しながら、より高度な処理性能に対応する必要性が生まれました。同時に、モバイルアプリの台頭により、多様な新しいコンピューティング機能への対応も求められるようになりました。Armは、Cortex-A9 CPUマルチコアプロセッサーでこうした課題に応えていきました。また、2011年には、負荷の高い処理では高性能コアを、そうでない場合には低消費電力コアを使い分ける「big.LITTLE」アプローチを導入しました。この手法は、現在もArmで採用されています。
接続性の推進
2010年代前半から半ばにかけてのIoTとコネクテッドデバイスの普及は、Armに新たな成長機会をもたらしました。Armの技術は、モバイルの枠を超え、拡大するテクノロジー環境の中で急速に増加する多様なデバイスに対応していきました。IoTの分野には、超低電力センサーとして使われる小型組み込みデバイスから、高性能かつ大規模な産業・ストレージシステムまで、幅広い用途の製品が含まれます。2022年には、世界の組み込みIoTデバイスの65%にArmベースのシステム・オン・チップ(SoC)が採用されていました。
ソフトバンクグループによる買収
ソフトバンクグループ株式会社(以下、SBG)の会長兼社長である孫 正義はかねてからArmに注目していました。孫は当時ArmのCEOであったSimon Segars(2013年にWarren Eastの後任として就任)とカリフォルニアで会談し、数カ月後の2016年9月5日、SBGはArmを買収し、支配株主となりました。これにより、約20年間ロンドン証券取引所とNASDAQに上場していたArmは非公開企業となりました。
新規参入領域での成功
SBGによる買収によって、Armは多額の投資が可能になり、オートモーティブやインフラなど新興分野への技術領域の拡大を進めました。この戦略は、当時ArmでIP製品グループを率いていたRene Haasが主導しました。
2018年10月に発表した、高性能コンピューティング(HPC)およびクラウドコンピューティング向けのNeoverse製品ラインは、2010年代末に大きな成果を上げました。代表例として、あらゆる主要ハイパースケーラーでArmベースのインスタンスが採用されたことや、2019年には、世界最速のスーパーコンピューターにArmベースのSoCが搭載されたことが挙げられます。その一方で、自動車における安全かつ電力効率に優れたコンピューティングへのニーズが高まる中、20年以上にわたり車載用半導体市場で展開してきたArmは、この分野での実績をより拡大していきました。
2020年代の新しいアーキテクチャ、新しいCEO
Armは2021年3月に開催したVision Dayで、高度なコンピューティングとセキュリティ機能を備えた新しいArmv9アーキテクチャを発表しました。その前年の2020年9月には、成長を続けるデータセンター市場でArmと緊密に連携していたNVIDIAが、Armの買収計画を発表。SBGとNVIDIAは取引完了のために取り組みましたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、2022年2月に契約の解消に至りました。同月には、30年間にわたりArmに貢献してきたSegarsのCEO退任と、Rene HaasのCEO就任が発表されました。その後、Armは2023年9月14日にNASDAQへの2度目の上場を果たしました。
Arm AGI CPUの登場
2026年3月、Armは次世代AIインフラ向けに設計された同社初の量産半導体製品「Arm AGI CPU」を発表し、重要なマイルストーンを達成しました。これは、IP提供を通じてエコシステムを支えてきた従来の立場から、自社アーキテクチャに基づく半導体ソリューションを提供する企業へと進化する、Armにとって大きな転換点となりました。
AIが、世界中で継続的かつ自律的に動作する処理となる中、Arm AGI CPUの投入により、ArmはAIネイティブなデータセンターにおける存在感をさらに強めています。また、大規模な本番運用に対応できるArmプラットフォームを求めるパートナー企業に対し、選択肢を広げています。
Armの現在地
Armは、創業以来の歩みと、35年以上にわたり数千人の優秀な従業員が積み重ねてきた成果によって、半導体企業向けIPライセンス分野を先導しています。グローバル企業として、21カ国に43のオフィスを展開しており、従業員数は英国ケンブリッジ本社に勤務する3,500人近くを含め、世界で9,000人を超えます。
1,000社以上の信頼あるパートナー企業による強力なテクノロジーエコシステムを背景に、Armの技術は3,500億個以上のチップに採用され、センサーからスーパーコンピューターまで幅広い領域を支えています。Armは現在、世界で最も普及しているコンピューティングプラットフォームであり、その技術は世界中のあらゆる人々の生活に関わっています。
12人の創業メンバーがケンブリッジシャーの七面鳥小屋で思い描いたビジョンを受け継ぎ、Armはこれからも、コンピューティングの未来を支えるテクノロジーの開発に取り組み続けます。
本記事は全2回の後編です。
関連リンク
Armの歩み(前編)
英語記事:The official history of Arm
Armについて
著者:Arm編集部
翻訳・編集:AI⇒SoftBank Group編集部